『あなた』へ

天使の微笑み

『・・・うさん、佐藤さん!』



『はっはい!』



『ぼーっとしてどうしたの?』



『いえなんでもないです』



秋の匂いが心地好い11月後半、私は介護ヘルパーの講習中だった。



親が介護の仕事に携わっていてどうしてもと頼まれ渋々来ていた。


『講習料は払うからお願いね!』


私は元々障害者に偏見はないがこうゆう仕事はやりたいと思わないと到底出来るものとは思っていたが親のいうことには逆らえなかった。



(私は今笑顔とか作れる状況じゃないのに・・・)



ため息と共に左腕のシャツをめくるとリストカットの傷が鮮やかに赤く残り、生きていることを確認させられた。



本気で死にたいわけじゃない、誰か私の苦しみに気付いてほしかった。



心の奥に閉じ込められた私からのSOSだった。



(・・・誰か・・・助け・・・て・・・)



(あなたはおとなしくしていればいいのよ!!

毎日真っ直ぐ家に帰り彼の気に触れなければ幸せなんだから!!

私は幸せよ!!

そう幸せなのよ!!)



私は失望のど真ん中にいた。



この世で一番可哀相なのは私だ、私は悲劇のヒロインだ。
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