『あなた』へ

暴力の後

『家まで送りましょうか?』



警察の人にそう言われたけど断った。



とりあえず一人になりたかった。



フラフラと少し歩いてビルの陰で訳も分からず泣いた。



もう、頭が真っ白だった。



何をすればいいのか、誰に頼ればいいのか、どこに行かなきゃいけないのかもわからなかった。



壊れた携帯電話を握り締めてまた泣いた。



とりあえず家に帰ろう。



どのくらい泣いたかわからなかったけどここにいてもしょうがないと思った。







家に帰るとソフトバンクの携帯が光っていた。



開いてみると彼からの着信で埋まっていた。



携帯電話は2台持っていてソフトバンクはほぼ家族用で家に置いていた。



留守電が残っていた。恐る恐る聞いてみると



(ごめん、最後に話せない?)




(ホントに最後でいいから電話頂戴)




(俺、とんでもないことをした。もう取り返しつかないよね・・・)




私は最後に一回だけ電話で話そうと決意した。




『なんであんなことしたの?!あんなことしたら元に戻れないじゃん。もう終わりだよ・・・全て終り・・・』



電話に出た彼に向かってとにかく言いたかったことをぶつけた。



そんなことを言っても何も戻ってはこないし、無かったことにもできない。



それでも悔しくて泣きながら訴えた。



『そうだよね、俺取り返しのつかないことしたよね。

・・・なんであの時警察に突き出してくれなかったの?その方が楽だったのに・・・

俺、死んで詫びるから・・・』
< 8 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop