BLOOD
「美緒姉…?」

ゆっくりと瞳を開けると、視界に入ってきたのは心配そうに自分を見つめる里緒の顔。

「里…緒。」

長く言葉を発していなかったかのように、喉がカラカラに渇いていて、上手く言葉を出せない。
しかし、美緒はなんとか言葉を絞り出すと、ゆっくりと起き上がった。

「やっと、目を覚ましましたね。」

聞き覚えのある声が聞こえて、そちらを振り向けば、犬ではなく綺麗な一人の男が立っていた。

「ブラウン?」

男は悲しげに微笑み、肯定も否定もしない。
しかし、その笑顔には見覚えがあった。
犬が最後に見せた笑顔だ。

「あの医師は?」

きょろきょろと辺りを見回し、美緒は問うた。

「逃げられました。」

悔しそうに顔を歪めて、ブラウンがそう告げる。

「そっか…。」

「申し訳ございません。二回も逃してしまうなど…。」

突然、ブラウンがバッと頭を下げて美緒に謝った。
その行動に美緒が驚き、慌てふためく。

「ど、どうして謝るの?二回も助けてくれたじゃない。」

「助けたなどと、私は思いません。私があやつを取り逃がしたせいで、貴方にまたも怖い思いをさせてしまいました。」

美緒がどう弁解しても、ブラウンは否定的で認めてくれない。
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