BLOOD
そして、美緒は「何?」というように小首を傾げた。

「貴方のご両親は生きてます。」

「え!?」

ブラウンの言葉に、疲れが押し寄せ眠気に誘われていた美緒の瞳が見開いた。
運転手に聞かれないようにと、ブラウンは美緒の耳に口を寄せると、囁くように語り出した。

「きっとカリクは貴方のご両親を狙うだろうと思い、私が匿っていました。」

「カリク?」

美緒も囁くような声で、聞いたことのない名前を繰り返す。

「医師に化けていた吸血鬼です。名をカリクといい、無差別に人や吸血鬼を襲うので、吸血鬼の世界では犯罪者とされています。」

「どうしてそんなに色んな事を知っているの?どうして犬から人になれるの?」

美緒は一気に質問を投げかける。
そんな美緒を、ブラウンは片手を上げて制した。

「ここでは全てを語れません。まずは家に帰りましょう。」

ブラウンはそう言うと、前を向いて黙ってしまった。
美緒は暫くブラウンを見つめ、口を開こうとした。
しかし、結局は口をつぐんだ。
車内を沈黙が包む。
美緒の家の屋根が見えてきた。
その時、唐突に沈黙が破られた。

「話してあげたらどないどすか?嬢ちゃん、悩んではりますやん。」

そう言い、声の主はにんまり笑うと美緒の家の前に車を止めた。
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