BLOOD
「ええ、知ってるわ。」

笑顔を崩さずに八重がそう言うと、美緒と里緒が顔を見合わせた。
二人の困惑した顔を見て、八重は覚悟を決めたように、ブラウンと清四郎に意見を求めた。
ブラウンは頷き、清四郎は歯を見せて笑った。
八重はそれを肯定ととり、美緒と里緒に語り出した。

「そうね…美緒と里緒には、ちゃんと話さなきゃね。まずは…。」

「八重はん、こないなとこで難しい話するんどすか?」

驚いたような呆れたような顔をした清四郎が、八重の話を遮る。

「でも…。」

困ったように眉を下げて八重が反論しようと口を開く。
しかし、それよりもはやく、清四郎がまた口を挟んだ。

「朔磨はんは全部気付いてはります。」

「え…?」

朔磨の名前が出た瞬間、美緒も里緒も訳が分からなかった。
しかし、驚きの声をあげたのは八重だった。

「あの…。」

あまりの意味不明さに、美緒がおずおずと口を開く。
しかし清四郎はそれをも制し、話を続ける。

「朔磨はんは知ってて八重はんの隣におったんどす。…そないどすね?」

最後の質問は誰に投げ掛けたのか問う前に、リビングへの扉が開き、朔磨が現れた。

「お父さん?!」

里緒が信じられないという顔つきで朔磨を見つめ、近寄った。
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