BLOOD
受話器が手から滑り落ち、大きな音を立てた。

「どうしたの?」

音を聞きつけた里緒が、電話の前で呆然と立ち尽くす美緒に問うた。
問われた美緒はがくがくと震えて、今にも泣き出しそうだった。

「お父さんと・・・お母さんが・・・。」

そこで言葉を切り、美緒は言葉を探すように目を泳がせた。
しかし、里緒は美緒の言おうとしていることがわかった。
ゲーム機のスイッチを切り、自分の上着を着て美緒の分の上着を手渡した。

「どこの病院?」

まだがくがく震えて、美緒は上手く喋れない。

「しっかりしてよ!美緒姉がしっかりしなきゃなんだよ?もう、奈緒姉はいないんだから・・・。」

奈緒は去年他界してしまった美緒の双子の姉だった。

「ごめ、ごめんね。」

美緒はしゃくりあげながらも、息を大きく吸うと吐いた。
そして上着を羽織ると玄関に向かい、靴を履くと扉を開けて外に出た。
その瞬間、また背筋が強張るような寒気に襲われた。
ぶるっと身体を震わせ、美緒は辺りを見回した。
視界に入るのは、綺麗に建ち並ぶ家々。
そして一匹の蝙蝠。
月を背に、ジッと美緒を見つめている。
美緒は蝙蝠から目を離せなくなってしまった。
目を反らせば、蝙蝠に襲われて死んでしまう。
そんな馬鹿な想いに美緒は捕われた。
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