BLOOD
「うっ…く。」

里緒が死体を見ないように、がっちりと自分の身体でガードすると、美緒は小さな嗚咽を漏らして泣きだした。

「美緒姉…。」

里緒は美緒の腕の中で暴れることもせず、ただじっと泣き続ける美緒を慰め続けた。

「(交通事故…?交通事故だけで、お父さんはあんな姿になるの?)」

白いシーツを下ろして出て来た人物は、かつては褐色のよい肌をした二人の父親である水島 朔磨だった。
朔磨の顔は褐色のよかった肌から青白い肌に変わり、かつて瞳があった場所には何もなく闇が広がるばかり。
そして、もっとも恐ろしかったのは、一滴の血も残さず飲まれたように干からびた身体。

「何者かに事故後襲われたのかと…私たちも悩みました。しかし、それは私たちの思い違いでした。」

また朔磨の顔に白いシーツをかけながら、医師はまるでこうしないと自分が泣いてしまうかというように、眉間に皴を寄せながら淡々と話す。

「なぜなら、彼らの死亡時刻が今年の夏なのです。」

「え…?」

美緒は医師の言葉に耳を疑った。

「目撃情報にも、今年の夏にという声がありました。」

「嘘だ!」

突然、美緒の腕の中でじっとしていた里緒が叫んだ。
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