BLOOD
里緒の唇はわなわなと震え、手はぎゅっと美緒の服を掴んでいる。

「嘘だと申されましても…。事実、人々がそう…。」

「嘘だ、嘘だ!お父さんとお母さんは今朝まで一緒にいたんだ!」

医師の言葉を遮り、里緒が大声で叫ぶ。
そんな里緒に、医師は溜め息を吐くと首を振った。
次の瞬間、医師の瞳の色が変わった。
黒い闇のようだった瞳から、深紅色へと。

「え…?」

美緒はその瞳の美しさに、身体が強張り動かなくなってしまった。

「全く…催眠のかかりにくい餓鬼はこれだから困る。」

コツコツと足音を軽快に鳴らしながら、医師は里緒と美緒に近付く。

「ここに呼び出すために、この二人には申し訳ないが死んでもらった。」

冷たい声と冷たい瞳で、医師は事もなげに言い放った。

「お前がお父さんとお母さんを!」

美緒の服から手を離すと、里緒は叫び声をあげて医師に飛びかかった。
それを軽々と避けると、医師は里緒の頭を掴んで高々と宙に浮かせてみせた。

「ぐあっ!」

悲鳴をあげてもがく里緒を見て、美緒は一気に恐怖が混み上げてきた。

「やめて!」

悲鳴に近い声で叫ぶと、医師の瞳が美緒を捕らえた。
身体が震えて足がすくむ。
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