年上の事情
孵化
男の人の―――彼氏というものの部屋に入ったのは初めてだった。
一人暮らしの男性の部屋。
何が起こるかぐらい、もうわかってた。
私、もう子供じゃないんだよ?
初めてつけた香水。
初めてつけた色つきのリップクリーム。
初めて履いたミニスカート。
初めてつけた…可愛い下着。
私は徐々に女になって行く。
深夜の彼氏の部屋。
ベッドの上で痛みを帯びながら
大好きな人の体で
私は本物の「女」になった。
「ゆいちゃん、大丈夫?」
「あ、はぁ…」
大丈夫じゃないみたい。
血は…出てないみたいだけど、腰に変な違和感がある。
っていうか、ちょっと痛かっただけ。
大人はあんなのが好きなの?
前にお父さんの部屋で見つけて、友達と面白半分で見たAV。
あれに出てた女優さんは何であんなに…
まさか、あれって痛がってるの?
当時の私は、セックスを気持ちのいいものだと思えなかった。
ただ
好きな人の体温を感じていられる
幸せな時間の共有だと思ってた。