記憶
出会い
お世話にも決してうまいとは
言えない歌声を聞きながら、
私は今日も駅前の噴水で
時間をつぶしていた。
よくいるストリートミュージシャン
耳に心地よく流れ込む街の音…
この瞬間だけは私は私でいられた。
「…ーはい、あざっす!!」
馬鹿でかい挨拶が聞こえて
周りの観衆が散っていく気配を感じ
私も重い腰をあげる。
夜特有の空気に包まれながら歩いていたら
いきなりグラッと体が傾いた。
「また、あんたか」
え、誰?
……転ばなかった?
右腕を誰かに捕まれてる。
助けてくれたのか…
慌ててお礼を言おうと口を開きかけたら、
「そうやって下ばっか見てるから転ぶんだよ」
呆れた様に呟かれた。
それが、君との出会い。