先生の秘密


「本庄さんって、面白いね」


「いやー、そんなことはないと…」


へらり、と愛想笑いを浮かべる。


何となく、学校での雰囲気と違い、接しにくい。


学校ではどちらかと言うと、隙のない完璧なキャリアウーマン風の女性だと思っていたのだが、今は親切な近所のお姉さんみたいだ。


いや、イチゴ牛乳買ってもらったくらいで、短絡的だとは思うんだけど。


「私、今と学校じゃ違うって、思ってる?」


「え」


自分の持つイチゴ牛乳のパックにストローを差しながら、先輩はこともなげに言った。


思わず、顔に出てしまっていただろうか、と顔をさすって、先輩がこちらを見ていることに気づいた。


何を考えているのか分からない無表情だ。


まるで、その表情が誰かに似ていて…


「いいのいいの。よく人に言われるから」


にかり、と学校じゃ見せないような純粋な笑顔を浮かべる。


「何て言うのかな。学校じゃキャラを作っているっていうのか、いや今も作ってるって言ったらそうなるんだろうけどさ」


言葉を選びながら話しているようで、視線をさ迷わせている。



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