先生の秘密
「完璧、ではない…?」
「完全と完璧は全くの別物。人間は不完全でいい、でもアンタは、完全だけど完璧じゃない。だから、アンタはずるい」
「そんなの、ただの暴論じゃないですか。あんまりですよ」
「そうかな…」
俯く先輩に合わせて、髪が揺れる。
「ずっと負い目にでも感じてきたんですか?それとも、言われた相手の問題?
先輩なら、その言葉がただの嫉妬や羨望から来る悪口みたいな物だと分かったでしょう?」
「でも…」
「完璧ではないからずるい、なんて嘘ですよ。
その人が先輩のどこを見てそう言ったのか知らないですけど、運動にしても容姿にしても、勉強は努力したのかもしれないけど、自分の生まれ持った才能を使わない方が勿体ないとは思いませんか。存分に活かしてこその人生でしょう。それとも、先輩はその人が言ったことが正しいと本当に思っているんですか?」
まくし立てる私に、先輩は目を瞬く。
私がここまで言うとは思ってなかったのだろう。
でも、自分の生まれ持った才能を否定されるのだけは、許せなかった。
先輩のような人を、ずっと傍で見てきたから。