先生の秘密
私の知っているその人は、昔から要領もよく人柄もよく容姿もよく、富だって持っていた。
完璧な人間だというのは誰の目から見ても明らかで、彼を尊敬する者も多かったけれど、妬む者も少なくなかった。
けれど、どんな中傷を受けても、どんな扱いを受けても、彼はいつも真っ直ぐで。
彼はいつだって、彼だった。
でも、私達は彼が努力してきたことを知っている。
何でも持っている彼だったけれど、だからこそ人の何倍も努力してきた。
私も聖もはつかも、きっと彼には敵わない。
彼のすぐ傍で見てきたからだ。
「やっぱり、本庄さんは面白いね」
ヘヘ、とどことなくすっきりしたような表情で先輩はそう言った。
もしかしたら、後輩からこんなことを言われて嫌われる可能性も考えていたのだけど。
「私にとって、一番欲しい言葉だったから」
少しだけ寂しげな表情を残したまま、イチゴ牛乳に視線を落とす。
先輩も、訳ありだったりするのかもしれないな。
「ねぇ、本庄さん?」
「はい」
「本庄さんのこと…青葉ちゃんって呼んじゃダメかな?」