先生の秘密
「先輩、見回りじゃなかったんですか」
ハッ、といち早く我に返った津川くんは呆れた様子で支倉と呼ばれた男子を見ている。
どうやら私のことは脇に置いておくみたいだ。
「ゆかりちゃんのことはべ・つ」
「…さっき、巫先生にも同じようなこと言ってませんでした?」
「津川くーん、ここは空気読もうよー!」
言いつつも全く悪びれた様子もなく、ヘラヘラと笑っている。
なるほどこの学校には珍しいチャラ男か。
支倉さんはYシャツ一枚に腕捲り、第2ボタンまで外し、ズボンは裾を折り曲げ、ネクタイを緩めて盛大に着崩している。
明るい色の髪は襟足にかかる程度の長さで、サイドを耳に掛けヘアピンで留めている。
でも確かに、細められた目も鼻も口も全体的に非の打ち所のないほど整っている。
特にこの学校じゃあ、モテないわけがない。
しかし、こんなに目立つ容姿をしているのに名前はさほど聞いたことがないというのは不思議だ。
思わず顔を凝視しすぎていたらしい。
支倉さんは、笑顔のまま首を傾げてきた。