先生の秘密
「大丈夫なら、これくらいやれるよな?」
ひく、と口の端を引き攣らせる。
覚悟はしていたけど、これで全くの効果がなかったら、先生にも自分の努力にも申し訳ない。
こく、と先生の目をしっかりと見て、頷く。
問題の数はそう多くはない。
それだけ、範囲も狭いということだ。
単に先生がテストに出やすいところを重点的に出している可能性もあるけど。
ちなみにテストを作るのは、藤島先生ではないらしい。
二年になってからは接点もないが、一年のときは大変お世話になった、栗原兆先生だ。
正直に言って、苦手だ。
嫌いという程ではないし、授業もとても分かりやすい先生なのだが。
あの鋭い視線がどうも、責められているような気がして真っ直ぐ見れないのだ。
それから一緒に数学も嫌いになってしまった。
決して栗原先生のせいではなく、元から私の成績が酷いのが悪いんだけど。
だから、栗原先生の作るテストってことは、解答用紙も見られてしまうというわけで。
もしかしたら、栗原先生にも私が頑張ったこと、分かってもらえるかもしれない。
一年では呆れられることしかなかったから。
自然と鉛筆を持つ手に力が入る。