先生の秘密


何故か突然歯切れの悪くなる先生に、首を傾げる。


今更、生徒を好きになった負い目に気づいた、とか?


いくら何でも、それはないか。


曲がりなりにも教師なんだから、そのくらいの常識と自覚くらいは持ち合わせているだろう。


「どうかしたんですか?」


「いや…別に」


先生はそれだけ言うと、今まで私の肩の上に置いていた手を下ろした。


「で、相談役って私は結局何をしたらいいんです?」


「おっ、じゃあ協力してくれんのか」


「違います!まだその内容を聞かないことには何とも言えませんから」


思わず噛み付くように乗り出すと、先生はひらりと難無くかわしてニヤ、と笑う。


意地悪な表情が似合う美形っていうのも、凄い。


というより、美形はどんなことしても美形ってことか。


「何にもする必要はねぇよ。ただ、相談に乗ってくれるだけで」


「相談、って?」


「俺の話相手になれって言ってんの」


んー、何か釈然としないような…。


「それだけでいいんですか?だって、先輩に意識させたいんでしょう?」


「そうなんだけど…いきなりアクションを起こすのもおかしいだろ」


それって、
要は動き出す勇気がないってことなんじゃ…。


「何か言ったか?」


「いえ、何も」



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