先生の秘密


「ふ、藤島先生!?」


悲鳴に近い叫び声を出したのは、私ではなくはつかの方だった。


「ったく…、危なっかしいやつ」


「す、すみません…」


そのまま、先生の方へ抱き寄せられ更にあちこちから悲鳴が上がる。


…完全に目立ってしまった。


チッ

小さな舌打ちが聞こえ、ハッと振り返ると、どことなく幼い顔立ちの可愛らしい男子生徒が鋭い視線を向けていた。


確か、内海先輩と一緒にいた一年生の庶務で、津川くん…と言っていたか。


口を開こうとした私を制して先生は、


「気をつけろよ」


それだけ言って食堂を出て行った。


多分、先生は津川くんに気づいていた。


けれど、今ここで津川くんを責めれば騒ぎを起こすことになるのは目に見えているはず。


だから、あえて最後にああ言ったのだろう。


周りから見れば、ただ転びそうになった私に対する心配の言葉。


私にとっては、津川くんに対する警戒。


私は津川くんに何か恨みを買ったつもりはないけれど、先生にはもしかしたら見に覚えがあるのかもしれない。



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