先生の秘密


先生は私が入っていくと、クルリと振り返り気まずげな表情で頭をかいた。


「本庄、今日は悪かった」


「何で先生が謝るんですか」


どう考えても、悪いのは全面的に津川くんだろうに。


「いや、多分、津川の恨みを買ったのは俺の方だ」


「え?」


これは――意外、だ。


もしかしたら先生は何か知ってるかもしれないと思っていたが、その恨みの矛先が先生とは考えつかなかった。


なら、どうして先生じゃなく私に突っ掛かってきたんだ?


「俺にも、何で俺じゃなくて本庄なのか、詳しいことは分からないが、多分津川が好きなのは内海なんだろう」


つまり、内海先輩の側にいる男を排除したいが、先生は顧問になり容易に手を出せなくなったから、代わりにあの日たまたまではあるが先生と一緒にいた私が的にされた、ということらしい。


「それにしても、その推測も無理がありませんか?津川くんと初めて会ったあの日に、先生と一緒にいたのは確かに私ですけど、でもそれだってあの日一日だけだし。先生と二人きりの場面なんてそれ以来なったことないですし?」



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