先生の秘密
「あ、あのー…?」
「…うっ、さい!変なこと聞くな」
力の入らない声で反論されても怖くないんだけど。
「先生って…すごい照れ屋?」
呟くと、先生は顔を真っ赤にさせたまま私をギッ、と睨みつけた。
先生は椅子に座って私は立っているから、自然と上目遣いになっている。
しかも涙目。
いや、何で。
「屈辱だっ…!」
「草食系男子ってどころじゃないような気が…」
今、肉食女子と草食男子が人気だって聞くけど、これはもはやそういうレベルじゃないと思う。
私は何となくため息を床に落として、準備室の中に据えられていた小さめのソファに腰を降ろした。
先生がやっと落ち着いてきたのか、ふぅーと長い息を吐いている。
「そんなことよりお前、何で俺が呼んだのか分かってねぇだろ」
「えっ?先輩の相談じゃないんですか?」
やっぱり、とさっきとは違う意味で息を吐く先生。
最近では、放課後にこの数学準備室に来て先生と雑談するのが日課になっていた。
だから、今日もてっきり先輩のことで何か進展があったのかと思ったのだが。