先生の秘密
「いくら数学が苦手だと言っても、この成績はないだろ!」
ばん、と力強くデスクに叩きつけられたのは、まだ返ってきていない中間考査の解答用紙だった。
一面、ビッチリと赤ペンが踊っている。
ひくり、と頬を引き攣らせた私を見て、先生はもう一度息を吐く。
「念のため他の教科の成績を見せてもらった。驚いたよ、数学以外全教科80以上。余裕で張り出し組だな」
張り出し組、というのは成績上位者のことだ。
学年別の成績によって決められ、50位以内の成績上位者が載る紙を張り出すことからつけられたらしい。
「勿論、数学がなければ、だか」
点数を目の前に掲げられ、曖昧に笑う。
15点。
赤点どころの話じゃなかった。
「しかも、まるで基本的なところから分かっていない。一年で何を学んできたんだ?」
「な、何もそこまで…」
「新学期ってことで、大分易しく作ったつもりだったんだが?総合分野ではお前より悪い成績のやつなんてゴロゴロいる。だけど、一教科だけここまで悪い生徒もお前以外いないんだよ」