先生の秘密
担任として、私を心配して言ってくれていることは分かっているから、ぐと押し黙るしかなかった。
「努力は、しているんですよ?」
「分かってる。じゃないと、数学だけこんな点数納得できるわけないだろ。俺だから舐められてるとか、考えたくもないし」
「そんなわけないじゃないですか!」
しまった、と思ったが時すでに遅し。
私の大声に先生は目を見開いて驚いていた。
が、すぐに優しい表情になってふ、と笑うものだから私がいたたまれなくなってしまう。
「す、すみません…」
「いや、素直に嬉しいよ」
まだ先生が崎浜高校に来てから一ヶ月しか経っていないのに、私は自然と先生を信頼していることに気づいた。
理事長が一目置いているのも理由の一つだが、何となく先生には気を許せた。
「ま、心配しなくても次の考査まで時間はある。明日から放課後補修な」
「え…!?」
ニヤリ、と口の端を歪めて笑う先生は、多分無意識ながら壮絶な色気を放っていた。
…こういうところで女性を陥落させていったのだろうな。