先生の秘密
「あ、はい。内海先輩は…」
「ごめんなさいね。詳しいことは言えないのだけれど」
なるほど、生徒会の執務に関することだったらしい。
「津川くんも、なんですか?」
できるだけ隣の津川くんに視線を向けないようにしながら、口を開く。
多分、こちらを睨んでいる。
「本庄先輩には関係ないですから」
そういえば、津川くんの声は初めて聞いたような気がする。
可愛らしい見た目に似合う比較的高いアルトボイスに、内海先輩がちらりと津川くんを一瞥した。
「津川くん、先輩に対して殺伐とした空気を出すのはどうかと思うわよ」
意外なほど厳しい内海先輩の口調に、津川くんはびくりと肩を震わせる。
当たり前ではあるが、生徒総会では落ち着いた先輩しか見たことがないから、新鮮だ。
「でも、この人は会長の」
「津川くん」
決して大きな声ではなかったが、津川くんを遮るには効果的だったようだ。
ニコニコと微笑む先輩の表情はいつもと変わらないが、何となく恐ろしい。