先生の秘密
「え?じゃあ、さっきのことって何ですか?」
「いや。あぁ、忘れて」
慌てたように笑う先輩に首を傾げる。
でも、津川くんと付き合っていないと分かって一安心だ。
いや、別にだからといって付き合っている人がいないとも限らないけど。
「ねぇ、本庄さん」
「はい?」
「その、理事長って元気?」
言いにくそうに尋ねる先輩は、どこかモジモジしている。
理事長って、最近はほとんど会ってないし、どちらかといえば生徒会長である先輩の方が詳しいと思うのだが。
「先輩の方が詳しいんじゃないですか?」
「そう…、そうね。ありがとう」
安心したようにニコリ、と微笑む先輩にはぁ、と曖昧な返事を返す。
よく分からないが、理事長に何かあったのだろうか。
「じゃあ、私はそろそろ行くわ」
先輩はそう言うと、ピンと伸ばした綺麗な姿勢で生徒会室に戻っていった。
まだ、鍵をかけていなかったらしい。