先生の秘密


生徒会長の様子がおかしかったから理事長の元へ来たのだが、何も変わったところはなさそうだ。


ホッと胸を撫で下ろす私の前に、コトリと置かれたのは熱々のグラタンだ。


「熱いから、フーフーして食べてね」


「ありがとう…」


スプーンで掬って口に運ぶ。


おいしい。


「ふふ、青葉も水臭いわね。来たいときに来ていいのよ?」


「だって、霞さん最近忙しそうだったから…」


呟いた私を見て、霞さんが優しく頭を撫でる。


それだけで、心にあった突っ掛かりが消えてなくなっていく。


あぁ、私は霞さんに会えなくて、寂しかったのか。


いつの間にか、涙がぽろぽろと零れていた。


霞さんは相変わらず、柔らかな表情で私の手を握る。


霞さんは、私や聖、はつかの家族になってくれた人。


泥水を啜っていた私達を、救い上げてくれた人だ。


「青葉、我慢しなくていいのよ。家族に会えなくて寂しくない人なんていないんだから」


いつだって、優しい言葉を掛けてくれる。


でも、甘やかすだけじゃなかった。


本当の母親のように、本当の父親のように、接してくれた。



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