先生の秘密
声を上げて泣いた。
霞さんにしがみついて、甘えられなかった分を吐き出すように。
「落ち着いた?」
霞さんは何も聞かなかった。
泣きたい分だけ泣かせてくれて、甘えたい分だけ甘えさせてくれて。
人望が厚い理由も分かる気がする。
11年前、まだ中学生だった霞さんは、両親に捨てられた私を拾ってくれた。
食料もなく、泥水を啜りゴミ袋を漁っていた私は、餓死寸前だった。
常陸園グループの経営している孤児院に連れて行かれ、私はそこで育ったた。
初めからいたはつかと、後から出会った聖とは親友となり、今や腐れ縁みたいになってるけど。
「親はいなくても子は育つけれど、家族はいなくちゃ寂しいものよ」
霞さんはいつもそう言って、小さな私を抱え上げてくれた。
その言葉がどれほど私の支えになっているかなど、霞さんのことだから一番理解しているのかもしれない。
「何だか、聖達に悪いことしてる気分」
「あら、じゃあ今度はあの娘達と来なさい。伊勢崎をそっちに寄越してあげるから」
「ダメだよ。伊勢崎さんも忙しいのに」
「馬鹿ねぇ、アイツにとっても仕事より貴女達の方が大切なのよ」