先生の秘密
そう言う聖も、霞さんを思い出しているのか頬が緩んでいる。
「そういえば、伊勢崎さんもいたよー」
「伊勢崎ぃ?今日休みじゃなかったっけ?」
伊勢崎さんの名前を出すなり、不機嫌な表情になる聖。
こういうときは、別に伊勢崎さんが嫌いで不機嫌になっているわけではない。
その逆で、ただ照れているのだ。
聖は素直じゃないから。
「うんー。何か会社の方で色々あったみたいだよ」
「その心は?」
「剣さん関係じゃないかなー」
「焦ってたってことね」
「うん」
剣さんは顔は弟の霞さんとそっくりなのだが、人付き合いがあまり上手くなく、人脈を広げることに長けていない人物だ。
能力は、次期総帥として申し分ないらしいのだが、本人はそれを望んでおらず、今は作家として細々と暮らしている。
鷹将さんが焦る気持ちも分かる。
兄弟揃って能力はあるのに、どちらもアクが強いから。
「アンタは余裕そうね。大好きな霞さんがピンチかもしれないっていうのに」
「霞さんはそんな柔じゃないよ。心配するのもおこがましいくらい、強い人だから」