先生の秘密


そう言う聖も、霞さんを思い出しているのか頬が緩んでいる。


「そういえば、伊勢崎さんもいたよー」


「伊勢崎ぃ?今日休みじゃなかったっけ?」


伊勢崎さんの名前を出すなり、不機嫌な表情になる聖。


こういうときは、別に伊勢崎さんが嫌いで不機嫌になっているわけではない。


その逆で、ただ照れているのだ。


聖は素直じゃないから。


「うんー。何か会社の方で色々あったみたいだよ」


「その心は?」


「剣さん関係じゃないかなー」


「焦ってたってことね」


「うん」


剣さんは顔は弟の霞さんとそっくりなのだが、人付き合いがあまり上手くなく、人脈を広げることに長けていない人物だ。


能力は、次期総帥として申し分ないらしいのだが、本人はそれを望んでおらず、今は作家として細々と暮らしている。


鷹将さんが焦る気持ちも分かる。


兄弟揃って能力はあるのに、どちらもアクが強いから。


「アンタは余裕そうね。大好きな霞さんがピンチかもしれないっていうのに」


「霞さんはそんな柔じゃないよ。心配するのもおこがましいくらい、強い人だから」



< 55 / 131 >

この作品をシェア

pagetop