先生の秘密


「すいませんっ!通してください!」


切羽詰まった声に振り向けば、通勤ラッシュで溢れ返るホームに埋もれる一人の学生を見つけた。


150あるかないかという高校生にしては低身長な女生徒は、ホームを抜けるなり慌てて駆け出していった。


新学期に遅刻なんて、ついていない生徒もいたものだ、と呑気に考えていたが、そういえば、と思い出す。


確か、内海と同じ制服だった気がする。


紺色のブレザーにワインレッドの柄付きネクタイとブルーチェックのスカート。


ワイシャツの一番上のボタンを開け、スカートも短すぎずいい具合に着崩していた。


全開にさせたブレザーのの合間から、同じ紺色のニットが見える。


密かにこの辺では人気の制服らしいことを知ったのは最近だ。


確か、全寮制だと聞いていたが、電車通学ということは、帰省先から登校しているのだろうか。




俺もそろそろ急いだ方がいいか、とホームを抜ける。


「ぶつかっておいて謝罪もなしかよ」


と、抜けた先に何故かぽっかりと開いた空間があることに気づいた。



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