先生の秘密
「す、すいませんでした」
「何、今更謝るとかふざけてんの?」
先程見たばかりの、あの女生徒だった。
少女の前でたかっているのは、見た目優等生で通っているような男子生徒が一人と、茶髪だの金髪だのとカラフルな色をしたいかにもな不良達だ。
学ランの優等生風な生徒がリーダー格のようで、周りの不良達と制服が違う。
不良達の向けるいやらしい目に、少女は鞄を両手で握りしめ、鋭い視線で彼らを睨みつけている。
それでも恐怖しているのだろう、遠目からでも分かるくらいに足元が震えていた。
「おい」
できるだけ低い声で彼らを萎縮させる。
声の主が俺だと分かると、頭の悪そうな不良の一人がガンを飛ばしながら殴りかかってきた。
馬鹿なやつらだ。
軽く避け手首を捻ると、あっさりと根負けする。
優等生風の男子生徒が、俺の姿を確認するなり周りの生徒に何か指示して、すぐに走り去っていった。
「大丈夫か?」
「あ、はい。ありがとうございました」
少女は今だカタカタと震える足に力を入れて、立っているのがやっとの状態だった。
それでも、俺に心配かけまいとしているのか、うっすらと涙の張った瞳で笑っている。
初めて近くで見て、やっと少女の容姿を確認できた。