先生の秘密
「お心遣いありがとうございます。これからは気をつけます」
ペこりと深く礼をする少女は、暗にこれ以上話を長引かせるなと言っていて、余計なお節介だったのかと気が滅入る。
やっぱり、慣れないことをするものではないな。
「あの、それじゃあ」
少女はまたそう言うと、崎浜高校の方角へ向かって走り出した。
本当に遅刻ギリギリらしい。
同じ方向に歩き出すと、ふと地面に落ちているものを見つけた。
シルバーのチェーンにリングが繋がった、シンプルなデザインのネックレスだった。
「あら、可愛らしいネックレスですね」
職員室に行くと、同じ新任の若い女性教師が俺の肩口から顔を覗かせてそう言った。
緩やかに巻いた長い髪を、片方の耳に掛ける仕種が妙に手慣れている。
紅く縁取られた唇が色っぽい、大人な女性という雰囲気だ。
この学校に来てから、こういうタイプと出会っていなかったから何だか新鮮な気分だ。
とは言っても、それ以前は常に周りは彼女のような女性だらけだったから、特に思うところはない。