先生の秘密
「そうですか…?俺は何か、素っ気ない印象を受けますけど」
目の前に翳すネックレスに視線を外さないまま、そう答えた。
シンプルなデザインは俺も好きだから、よく自分で買ったり貰ったりすることも多いが、このネックレスは、チェーンとリングが反発し会って、義務的に一緒に寄り添っているようだった。
おかしな表現だとは思うが、直感としてそれだけが頭を占める。
「素っ気ない、なんて。シンプルさが売りなんだから、それが当たり前じゃないですか?」
心底煩わしそうに眉を寄せて隣に座る男は、先程紹介されたばかりの同じ学年の担任を受け持つ、栗原兆――くりはらきざし、だ。
銀フレームの眼鏡から覗く鋭い視線が、厳しく俺を咎めている気がした。
否、多分実際に咎めているのだろう。
社会人として第一印象は、何より重要な情報の一つだ。
栗原先生でなくとも、俺のこの外見であまりよく思われていないことは、分かりきっている。
決して俺自身のせいではないと理解していても、だ。
しかし、神聖な学び屋の教員という立場で、悪目立ちするというのはどこをどう差し引いても、よろしくない。
生徒達をむやみやたらに刺激したくはないだろうから。