先生の秘密


それから、滞りなく始業式は進み、後は新任教師の挨拶だけという時になって、俺は呼ばれる声に壇上に登る。


同じく、巫先生ともう一人の新任、筑波先生が後に続く。


「――皆さんとこの崎浜高校で生活できることに、感謝します」


三人共、無難な挨拶を終えて、壇上を降りていく。


途中でざわついたのは、ご愛嬌だ。


意外だと思われるかもしれないが、こう見えて中学高校と生徒会長としてステージで発言することに慣れている。


その度に、こうして騒がれることは多かった。


例の如く、他の先生方は迷惑そうな表情をしていたが。


栗原先生に視線を移すと、涼しげな顔で飄々と立っていた。


さすが、だ。


今だにざわついている一角を覗くと、見覚えのある生徒を見つけた。


長い黒髪の異様に目立つ生徒と、背の高い活発そうな生徒の隣にいるせいで、少々影が薄い存在になっているが、その可愛らしい顔立ちを忘れることはない。


「随分と楽しそうだな」


周りの生徒も俺が近づいていることに気づいていなかったのか、またあの甲高い声で叫んでいる。


…うるさい。



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