先生の秘密


「はーい…」


仕方なく、そう広くもない準備室の開いた席に座り、問題に目を通す。


が、すぐに見るのすら嫌になった。


多分、基礎的な問題から選りすぐってきたのだろうが、この学校のレベルから選んでいるのなら、到底私に解ける問題はない。


降参の意を示すためにも用紙を先生に突き返せば、呆れた様子ながらも私の席に近づいてきた。


「この程度の問題も解けないで、どうやって入学したんだ?」


顔をしかめた先生は、そう言った。


「うち、国語が必須で後は数学と英語のどちらか選んで受験できましたから」


勿論、選んだ教科は英語だ。


元から、理科や社会もあまり得意な分野ではなかったから、幸運といえば幸運だ。


根っからの文系というか。


「あぁ、そういえばそうか。にしても、一年のときの担任は何も言わなかったのか?」


「…補習はしてましたよー」


苦笑いを零す私に、先生は怪訝な表情をしている。


担任は嫌な先生ではなかったけれど、今私が数学を嫌いになった理由とも言える人だった。


ちなみに、まだこの学校で教師をしている。



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