先生の秘密


前髪だけ上げてヘアピンで止めているから、サイドの横髪だけが初夏の動きに合わせて跳ねている。


「おはよう、はつかちゃん。今日も元気そうだね」


「相変わらず、馬鹿丸出しね」


「にゃにをー!私は元気なのが取り柄なの!聖みたいにムッツリする方がどうかと思うよ」


「だ・れ・が、ムッツリしてるですって?!」


聖の背後に般若が見える…。


はつかは、さっと私の背中に隠れてビクビクと聖の様子を伺っている。


そんなに怖いのなら、いちいち突っ掛からなきゃいいのに。


はぁ、とため息を一つ吐いて、ギャーギャーと騒ぐ二人の声を聞きながら先を歩く。


「本庄先輩」


その、些か小馬鹿にしたような可愛らしいアルトボイスに、瞬間聖の般若顔が反応した。


「津川くん」


生徒会庶務、一年津川雅祢。
女の子のような整った顔立ちとは裏腹に、過激な一面も持ち合わせる、生意気な少年だった。


津川くんは、女子寮の壁に寄り掛かり、腕を組んで私達を見ていた。



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