先生の秘密


「そんな分かりきった嘘に騙されると思った?」


「まさか」


ふ、と嘲笑すると、優雅な動きで肩を竦める。


幼さを残した可愛らしい顔立ちの彼だが、背はさほど低くはなく、そのアンバランスさが違和感なく自然に溶け込んでしまうほど、彼は美しかった。


それなりに男子の格好をしていれば、ヨーロッパの貴族のようで恐ろしく絵になる。


そんな彼だから、周りの視線を釘付けにする。


しかも、ここは女子寮の前だ。


当たり前だが通行人も増えるわけで。


私達の異様な空気に、野次馬はすぐに集まってしまった。


「貴女達!何してるんですか!?」


慌てた様子でこちらに駆けてくる風紀委員の腕章をつけた女生徒。


「あれ…、風紀副委員の渡貫美鈴(ワタヌキミスズ)よ」


そういえば、聞いたことがある。


風紀委員長は、影が薄く表舞台に上がることも少ない人で、名前すら知られていないのだが、その副委員長の取り締まりはかなり厳しいことで有名だ。


とは言っても、融通のきかない人ではないから、特に嫌われているわけでもない。



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