先生の秘密
どもりながらも必死に気持ちを伝えてくる敦史が可愛くて、思わず抱きしめてしまった。
「~~!」
「可愛いなぁ、もう!」
施設で育つ子供達は、様々な経歴を持っているが、そのほとんどが虐待を受けた子供達だ。
敦史も例外ではなく、母親からかなりの虐待を受けていた。
初めて会った日は、子供とは思えないくらい、ほの暗い灯を瞳に点していた。
虐待を受け続ける子供は、自分が虐待を受けているということに気づかないらしい。
その環境が自分にとって当たり前で、逃げるという思考さえも働かないそうなのだ。
そんな状況が毎日、堪え難い痛みに翻弄される、考えただけでゾクッとする話だ。
それを、こんな年端もいかない子供が、受けていたのだ。
私や聖も似たような境遇だった。
敦史の身体にも今だ癒えぬ傷が生々しく残っている。
「あっ!あつしだけいいなー!おれもー」
「あたしもー!」
次々とやって来る子供達に三人で順番に抱きしめる。
親の愛情を受けられなかった子供達ばかりだから、こういう触れ合いで愛情を補うのだ。
私も、霞さんがあの時助けてくれなければ、今の私はないだろう。