幸せよりも欲しいものは何ですか?
私が出勤の支度をしていると、春樹がやっと起きた。
「おはよ!」
『…お~。』
眠たそうな春樹が凄く可愛い。
「早く支度しちゃったら?」
『面倒くせぇ…。』
特にいつもと変わらない朝。
子供についても触れる事は無かった。
そして支度を終えた私達はそれぞれの会社へと向かう。
目見て話しにくい事はメールでする。
一緒にいる時に気分悪くしたくないから、バイバイした時にメールをする。
今までもそうしてきて
この日もそうだった。
私が子供の事で話そうと携帯を開いたら
ちょうど春樹からメールがきた。
『ごめんなさい。』
その一言だけ。
「…私、実家に帰ろうと思う。しばらく母親に出産について聞きたいし。」
実家と言っても、同じ市内で、今住んでる所から車で30分ほど走った所にある。
『本当に…産むのか?』
「産むよ。 春樹の子供だもん。 大切にしたい。」
『でも…結婚出来ねぇし…。ごめん。どうしていいか分からない。』
「うん、分かってるから。」
『実家に…両親に俺の事なんて話すの?』
「まだ分からない。」
『…彼氏だと言って説明しな。曖昧な関係の男じゃ両親納得しないだろ。』
「…分かった。」
『それと…お前や両親のタイミング良い時に…俺を呼んで。』
「え?呼ぶ?」
『頭下げるのが人として当たり前だろ。お前だけに苦しい思いさせるわけにはいかねぇよ。』
「ありがとう…。」
私は会社に向かって歩いている途中
涙をこらえた。