幸せよりも欲しいものは何ですか?

逃げ道

冷たかった夜は去り

カーテンの隙間から差し込む陽に目が覚めた。

私は春樹に背を向けた体勢でいた。




…………。




後ろから春樹の腕が、私の体を包み込んできた。
だんだんと力が入り、後ろから低い声が聞こえた。




『悪かった。


…また、抱き合ったら…


…゛やっぱり一緒にいたい゛とか言って、


お前が戻ってくる気がした。


俺は 体以外で、


お前に幸福を与えてやれた事なんて無い。



お前の体を喜ばせられても


お前の心まで幸福を与えてられず


一年間も、嫉妬をこらえ我慢し、泣かせてばかりで…


だから、俺はどうしたらお前が戻ってきてくれるのか分からなかった。



でも、お前は拒否るからさ…


本当に離れてしまうんだと


改めて実感してしまったら…


昨日………』




私を抱く春樹の力が更に強くなる。

苦しいくらい。



『ごめん…。』



消えそうな声が聞こえた。
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