魔女の報酬2 ~果ての森編~
「陛下、けれども、だれが忘れようとも、我々だけは忘れてはならないのです。あの過ちを二度と繰り返してはならないのです」

『黒魔法の世』の終わりは、魔界に追放したはずの生き物たちの帰還によってはじまった。彼らは、魔法使いたちの手によって改造され、化け物となった人間を指揮官としていただき、魔法使いたちに戦いを挑んだ。

 当初、戦いは魔法使いたちに有利のうちに進んだ。

 もともと彼らが創り出した生き物である。その弱点も知り尽くしていた。だが、いくらかの魔法使いたちが彼らの側につき、さらには魔法使いたちが創り、自らに使えさせていた生き物どもが反旗をひるがえしたとき、状況は一変した。

 傍若無人に世界を支配していた魔法使いたちは、次々に倒された。勝利は魔界より、もどり来たったものたちの手に落ちた。

 だが、彼らは人界にとどまり、この世界を支配することを選ばなかった。魔法使いたちによって創られた生き物たちのほとんどは、魔界に帰っていったのだった。

 この戦いを生き延びた魔法使いたちは、魔界へとつながる戸口を永遠に封じ、このような愚かな過ちを二度と起こさぬために、魔法使いたちの行動を律する組織が作られた。それが、現在の魔法院の前身である。

 魔法院の役割は、魔法使いたちに仕事を斡旋するだけではない。彼らの行動を律せねばならないのだった。それは、すなわち院長であるラムルダは、彼らの行動に関して責任を負う立場にあるということであった。
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