魔女の報酬2 ~果ての森編~
しかし、ふわふわの金髪にまるで子供のような丸顔の国王は、いつもと変わらぬ愛想の良さで答えた。
「それは重畳。我が息子には今一つ覇気に欠けるところがある。そなたのようなしっかりとした女性がついておれば、我がウィルランドも安泰というもの」
「……っ、誤解しないでよね。私はあなたの国を乗っ取ってやろうというのよ」
予想外の言葉に返答を一瞬、詰まらせたメディアであったが、すぐに立ち直りさらに噛み付いてみる。
けれど。
王様はさらにその上を行く。
「それは、その時のこと。まあ、とにかく式の日取りは早い方がいいな。いやあ、実にめでたい」
にこにこにっこり。
愛想はいいのだが、何を考えているのかいまいち掴みどころない王は、しごく機嫌良くこの結婚を精力的に進めようとしてくれた。
王を怒らせてこの結婚を向こうから破棄させようと仕組んだのに、薮蛇もいいところだった。
「そんなに嫌ならさっさと出ていけばいいじゃないか?」
少々うんざりとした返答が部屋の片隅の大きな机の向こうから返ってきた。
声の主は机の上にこれまたうずたかく積まれた書類の山から顔を上げると、落ち着いた知性的な紫の瞳をメディアに向ける。肩に無造作にかかる艶やかな黒い巻き毛が揺れた。
彼の秀でた額には第三の目のようにも見えるサークレット(額飾り)の紫水晶が煌めいている。
それは彼の地位、魔法院の院長すなわちウィルランドすべての魔法使いの頂点に立つ魔法使いの長であることを示していた。
端整というには少々蒼白く痩せぎすな顔立ちをしているが、どことなく暖かな雰囲気を有する人物である。二十代前半くらいにしか見えないが、実は三十をとっくに越えている。
魔法使いの肉体は普通の人間より年を取りにくい物なのだ。十五、六にしか見えないメディアでさえ今年二十才になっている。
「それは重畳。我が息子には今一つ覇気に欠けるところがある。そなたのようなしっかりとした女性がついておれば、我がウィルランドも安泰というもの」
「……っ、誤解しないでよね。私はあなたの国を乗っ取ってやろうというのよ」
予想外の言葉に返答を一瞬、詰まらせたメディアであったが、すぐに立ち直りさらに噛み付いてみる。
けれど。
王様はさらにその上を行く。
「それは、その時のこと。まあ、とにかく式の日取りは早い方がいいな。いやあ、実にめでたい」
にこにこにっこり。
愛想はいいのだが、何を考えているのかいまいち掴みどころない王は、しごく機嫌良くこの結婚を精力的に進めようとしてくれた。
王を怒らせてこの結婚を向こうから破棄させようと仕組んだのに、薮蛇もいいところだった。
「そんなに嫌ならさっさと出ていけばいいじゃないか?」
少々うんざりとした返答が部屋の片隅の大きな机の向こうから返ってきた。
声の主は机の上にこれまたうずたかく積まれた書類の山から顔を上げると、落ち着いた知性的な紫の瞳をメディアに向ける。肩に無造作にかかる艶やかな黒い巻き毛が揺れた。
彼の秀でた額には第三の目のようにも見えるサークレット(額飾り)の紫水晶が煌めいている。
それは彼の地位、魔法院の院長すなわちウィルランドすべての魔法使いの頂点に立つ魔法使いの長であることを示していた。
端整というには少々蒼白く痩せぎすな顔立ちをしているが、どことなく暖かな雰囲気を有する人物である。二十代前半くらいにしか見えないが、実は三十をとっくに越えている。
魔法使いの肉体は普通の人間より年を取りにくい物なのだ。十五、六にしか見えないメディアでさえ今年二十才になっている。