魔女の報酬2 ~果ての森編~
(こ、これは!)

 このものの正体に思い当たって、メディアは愕然とする。
 あのヴィゼの空疎な表情。
 古城をおおっていた異様なまでの緑の木々。

(吸魔樹、これは吸魔樹?)

 吸魔樹、それは人の魔力を糧とするおぞましき生き物。
 おぞましいのは魔力を糧とすることではない、その獲物を求める手段である。

 自ら動けぬ吸魔樹は、魔力を吸い取った人間をさらなる獲物を得るための傀儡としたうえで、その記憶と知識をも利用するのだ。

(そうか、ヴィゼは……。)

 今になってメディアは理解した。
 彼は操られていたのだ、吸魔樹に。

 ヴィゼはロランツとメディアの関係を利用して、彼女をここにおびき寄せた。吸魔樹が強大な魔力を持つものを次なる獲物として求めたから。

(でも、なぜ? 撲滅されたはずじゃなかったの?) 

 吸魔樹はその習性ゆえに、遠い昔、魔法使いたちによって滅ぼされた。いまでは記録にしか残っていない生き物だった。

(それが、なぜ?)

 だが、その疑問を解決する暇はなかった。

 吸魔樹の触手はその飽くなき本能のままに、メディアを強く締めつけ、魔力を絞り上げようとした。

 もともとメディアはその強大な魔力のためか、力を制御するより放出することの方が得意でもあった。そのために抵抗し難かったのだが、それでも簡単に引き下がる気は毛頭な
い。

(そう簡単にやられてたまるもんですか! このメディア様を甘く見るんじゃないわよっ!)

 メディアの生来の負けん気が頭をもたげた。
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