魔女の報酬2 ~果ての森編~
「メディア!」

 あわてて駆け寄ったが、そこにいたのはメディアではなかった。しなびたミイラのようなものがうごめいている。

「ヴィゼ?」

 ミイラのわずかに残る目鼻立ちとを見取って、ラムルダは問いかけた。あまりにも変わり果てたさまに、それ以上は言葉もない。

「ラムルダか」

 弱々しいけれど、その声に宿る、いつもの彼の優しい穏やかさを聞き取って、ラムルダ
は愕然とする。これはヴィゼだ。果ての森の番人であり、ラムルダのよき友であったヴィゼだ。

 ヴィゼはさらに何か言おうとするのを、ラムルダを止めようとする。

「いいから、何も言うな。すぐに治癒の魔法を」

 けれど、次の彼の言葉にラムルダは凍りついた。

「き、吸魔樹は……、やっと解放……」

「吸魔樹だと」

 あれは撲滅されたはずだった。魔法使いの力を糧として、さらに餌とした魔法使いを次の獲物をねらうための傀儡と化す恐るべき植物。もしそれがまだ存在するというのならば、それは『魔界』しかない。しかし、その『魔界』は……。

 ラムルダはちらりと『果ての森』に視線を走らせ、あわててヴィゼに視線を戻した。  が、遅い。
 すでに彼は事切れていた。

「ヴィゼ」

 彼の死に顔は安らかだった。まるで、最後にラムルダに会い、吸魔樹のことを伝えたことを喜んでいるかのように。

 ラムルダは目を閉じ、しばらく彼に黙祷を捧げると、立ち上がった。

 今はまだ悲しんでいるときではない。

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