魔女の報酬2 ~果ての森編~
吸魔樹。

 彼の話がほんとうだとすると、メディアが何をしたのか薄々わかった。

 彼女は吸魔樹に対抗するために、その力のありったけを解放したのだろう。

 まったく、無茶ばかりをする。もし、吸魔樹の魔力の吸収能がメディアのそれを上回っていたら、助かるすべはなかったはずだ。

 それにしても彼女はどこだろう。さっきから彼女の魔力の波動を感じない。いつもなら勝手に漏れ出す魔力で居場所がすぐ知れるというのに。

 吸魔樹に対抗するために魔力を放出したせいで、消耗しきっているのか。

 それとも……。

 もう一つの可能性は考えたくもなかった。彼の最初の教え子であり、もっとも手の掛かった弟子。ほとんど親代わりにずっと面倒を見てきて、そして、今でも面倒ばかり持ち込んでくる、その彼女がすでにこの世の人ではないなどと。

 ラムルダは無意識のうちに首を振る。

 メディア、君はまだ死んではいけない。君はまだ何も知らない。

「メディア、どこにいる」

 彼の声はむなしく響くばかりだった。

「メディア!」

 彼は、あたり一面の瓦礫の山をにらみ据えた。紫の瞳に強い決意の色が現れる。

(居場所が分からないのなら、一掃するまで)

 死なせるわけにはいかない。魔法使いの長としても、一個人としても。何としても、何を引き替えにしても。たとえ、己の力を使い果たしても、助けてみせる。

 知らず口元に苦笑が浮かぶ。

(無茶ばかりすると、メディアを責められないな)

 魔法の杖が水平に掲げられる。
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