撒く女【短編】
私の右隣、何の木だかわからない植え込みの正面にはいかにも買い物の帰りといった様子のおばさんが一人立っている。
重い荷物にくたびれたのか、持ち手のヨレヨレになったスーパーのビニール袋が彼女の周りを囲んでいる。
その他に彼女はチョコレート色の地に金色の細やかな模様が特徴的なブランドのバッグを抱えていた。
まだ学生で稼ぎのない私には興味のない代物だけれど。
気を紛らわせるためにしばらく彼女を観察していると、彼女は急にブランドバッグの中をガサゴソと漁り始めた。
いったい何が出てくるんだ?
そんな私の期待を彼女は裏切らなかった。
いや、むしろ十二分に応えてくれたと言っていい。