CHERRY
「瑠藍」
「るあい?」
「うん」
「聞いた事ないな……」
うーんと悩んでいる涼ちゃん。
悩むのも……当たり前かな。
だって路上ライブの子だもの。
そりゃ……瑠藍さんが歌ってると人だかりはいっぱい出来るけれど……。
それでも知ってる人はほんの僅か。
……名前聞くのにも一苦労だった。
歌手名 玖珠 蘭<クス ラン>
本名 杜宮真 瑠藍<トミヤマ ルアイ>
「…今度、聞きにいく?」
………なんて言えない。
断られたらどうしよう
その思いが身体中を巡る。
だって…断わられたら、話事が無くなっちゃう。
そう思い、口を噤む。
「………」
「つかあたし歌手とかあんまり知らないんだよねー。もしかしてかなり有名な人だった?」
無邪気な笑顔で私の顔をのぞき込む。
「有名……じゃないかな。路上ライブの子だから」
「えぇえっ?!?!うそ、路上ライブ?!なんかカッコいいー!!」
目をキラキラさせる涼ちゃん。
女の私でさえその自然な反応に笑みがこぼれる。
「りょーおー、誰がカッコいいんだよ」
甘ったるい声
聞き覚えが無い声に振り向く。
「蓮にはカンケー無いよ」
「っな…、気になんだからいーじゃん」
どうやら涼ちゃんの友達らしい…。
中学生なのに明るめの茶毛はねこっ毛なのかフワフワ……髪質は柔らかそう。
髪型は跳ねてる毛が肩に付くか付かないかくらい。
『蓮』と呼ばれる男の子は涼ちゃんより背が低く…、160くらい。
「へーほー……」
ニヤニヤしながら男の子の事を見る。
そんなにあたしの好きな人が気になんの?
そう言うとねぇ~、ゆずと私に同意を求める。
いきなり話を振られて唖然とする私。
………そんな話してたっけ……?
……こ、これは…頷くべき?!?!
「う、うん」
「えぇーー?!?!……柚紀ちゃんまでそんなこと言うのー?!」
……ん?
柚紀ちゃん…?
・・・・・
「な、なんで名前……」
「さっき覚えた☆」