傷の行方

彼が求めるもの

彼から突然 引越してほしいと言われた



同棲していた人の思い出の中に



帰したくないという



私は生活が いっぱいいっぱいだから



しばらく待って欲しいと告げた



彼は自分の持っているマンションが



ひと部屋空いたし家賃もいらないから



そこに来ないかと言った



私は男の人のお世話にはなりたくなかった



それは難しいと断ってしまった



すると彼は独占欲がどんどん強くなった



大好きな人の独占欲は



きっと嬉しいものなのだろう



けれど 私にとって独占欲は



どんなに好きな人でも窮屈に感じる



彼は私の全部を求めた



目に見えないものまで



確かなものにしたい気持ちは解るけれど



目に見えないものこそ大事だと思っていた



彼は


「俺が愛してるくらい愛して欲しい」


と言った



< 115 / 210 >

この作品をシェア

pagetop