傷の行方
彼は黙ってしまった



私は余計なことを言ってしまったと思い



一生懸命笑って



「私もすぐに好きな人できるから」



とか



「絶対に幸せになってね」


とか



なんとか自分に言い聞かせるように


彼に言葉を投げかけた



すると彼が


「もう 無理して笑わないで」と言った



無理なんかしてない


こうなることは


ちゃんと ずっと前からお互いに知っていたし




結ばれることはないと


わかっていたんだから


だけど


彼と笑いあった時間を



愛し合った時間を



思い出したら



泣き出して止まらなくなりそうだったから


私は「そろそろ帰ろう」といった




彼は「帰りたくない」と言い出した



雨はどんどん強く



車のフロントガラスを



濡らしていた
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