傷の行方
私の場合は人ごみにいると


呼吸ができなくなる


その時は発作も酷くなっていたから


気を失ったり


金属音で不整脈になったりした


この病と上手く付き合えるようになって


血のにじみでる努力をした



長い時間をかけて


私は自分ひとりで


電車に乗ることができるようになった



外にでて歩くことからはじめたから


本当に発病してしまったとしたら


すべて


今までのすべてが


無駄になってしまったと思った


会社の上司は私の病気も知っていた



現場に行き仕事をして


しばらく彼女からは何もしてこなかった


けれど私が発作で苦しんでいる時に


トイレで呼吸を整えた後


彼女が洗面器に顔を近づけていた


つわりだ



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