◆ イノセント・イノセンス
「なんでさぁ、杏は毎日ここに来るの?」
「分からない?」
「どうだろう?
僕がほっとけないの?
天使だから」
「天使だから、ねぇ……
世界にはもっと不幸な人が
たくさんいるわ。
それにあなたは
自分を不幸だと思わないから
あなたに私は必要ない」
杏は
そこまで言って
結論は言わない
「答えは自分で出せと?」
「そうね」
杏の長い栗色の髪が
風と踊る
不意に
触れたい、と思った