猫の世話は大変です。
まぁ、樹理の気持ちも分からなくもない。
俺がさっきまで会っていた奥さん―人妻―は以前、樹理を恋人と勘違いして学校帰りに千暁と帰っていた樹理に喧嘩をふっかけた(らしい)。
『いやぁ、あの時は楽しかった』
と、千暁は語る。
聞いたところ、一方的に責められた樹理は話が読めず、ずっとポカンとしていたらしい。
しかし、奥さんが『涼の!ピー!は私のものなんだから!!』と叫んだ瞬間(普通の道路でなんてことを)、覚醒した。
『私は勇の!ピー!しかいらなああぁあい!!あんな短小くれてやる!』
とまぁ、奥さんに負けない(寧ろ酷い)爆弾を投下した。
そこからは、奥さんは俺の、樹理は勇の、についてずっと言い合っていたらしい。
奥さんは分かるが、勇とそんな関係でもない樹理が何故勇の息子について語れるんだ、と疑問に思ったが、怖くて未だに聞けていない。
奥さんも見たもことないのに勇の息子を貶すものだから、現在、樹理の中で奥さんは敵だ。
「あんなおばさんのどこがいいわけ?体?」
「お金あるじゃん」
「最っっ低。グズめ。不能になってしまえ」
「ひ、酷い…。不能だなんて」
「不能になったら、少しは紳士になれるかも。勇みたいに」
いつでも樹理の基準は勇です。
俺だって、いや寧ろ俺のほうが勇より紳士である自信はある。
彼、KYだし。
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