envyⅠ
そう思うくらい、ここで生活できそうな部屋だった。
置かれているものに気を取られていて気付かなかったけど、インテリアもよく見ると西洋っぽいもので統一されてる。
小さな猫足のガラステーブルの上には、“不思議の国のアリス”の三月兎がモチーフらしいティーポットとティーカップ、中央の3段のケーキスタンドにはカラフルなマカロンが盛られてる。
3段のケーキスタンドなんて映画の中でしか見たことがなくて感動した。
全体的に白とかアイボリーのインテリアはとても上品だった。
ついさっきまで見ていた屋台と世界が違いすぎて、思わずため息がでる。
カラフルなマカロンを見ていると、薄紫のマカロンに手が伸びてきた。 はっとして咲弥さんを見るとマカロンをくわえて、壁の掛け時計を見てた。
この部屋に見とれていてよく考えてなかったけど、咲弥さんもかなりすごい人なんだろうと思う。 だってスイートルームになんて泊まってる。
仕事はなんなのか、どころか名前だって今日知った、私の友達。
もう少ししたらモノポリー届くと思うよ。 それまでに僕シャワー浴びるから、くつろいでてね。 って咲弥さんは手をひらひらと振って奥の部屋に消えていってしまった。
一人になった私は隣の部屋の大きなベットに腰掛けた。驚くほどふわふわで、ここで眠れたら気持ちいいだろうな、と思う。
やることがないので、さっきの部屋に戻って家具や置物をゆっくり見てまわった。
飾り棚の上のショーケースに飾られた、コインがついているネックレス、ふわふわのソファー、アンティークな二脚のイス。
女の子の夢を、ぎゅっと丸めて玩具箱に詰め込んだみたいな。
映画のセット、みたいな。
こんなところで生活してみたいと思う。
私が部屋中を歩き回っていると、トントン、とノックの音がした。